フェード現象とロードバイク用ディスクローター

先日の紐引き油圧ブレーキの件から心機一転、てり~です。本当に申し訳ありませんでした。そして暖かい応援のメッセージ本当にありがとうございました。心を入れ替えて安全に配慮した情報発信を頑張らせて頂きたいと思います。

フェード現象とは

この4日間、禿げるほどブレーキについて考えて勉強しました。お陰様で大分理解が進みました。紐引きに限らず、自動車用途も含めて油圧ブレーキには三つの大きな弱点があります。

油圧ブレーキの三大弱点
① オイル漏れ
② ベーパーロック現象現象
③ フェード現象

①オイル漏れと②ベーパーロック現象については前回の「安価な紐引き油圧ブレーキを選ぶべきではないこれだけの理由」で解説した次第です。

安価な紐引き油圧ブレーキを選ぶべきではないこれだけの理由 | キャノンボーラーに憧れて
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はじめに この度は当ブログを読んでくださる読者様にご心配とご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ありませんでした。私がアリエクスプレスで購入した安価な紐引き油圧ブレーキをその潜在的な…
https://becannonballer.com/2021/11/18/post-529/

ここまで来たら③フェード現象についても勉強したくなるというものです。フェード現象とは長い下り坂等でブレーキをずっと引きずる様な使い方をした時にブレーキパッドとローターの接触面の温度が上がり過ぎて、ブレーキパッドの摩擦材が気化してパッドとローターの間にガス膜ができる事でブレーキが効かなくなる現象です。

ベーパーロック現象とは。フェード現象とは違う?
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べーパーロック現象をペーパーロック現象と覚えている人がいますが、それは間違いです。べーパーロック現象のべーパーとは英語のvaporで「蒸気」という意味です。つまり蒸気によって制動力の伝達がlock「阻害される」ということをさしています。車のブレーキが効かなくなるべーパーロック現象、同じようにブレーキの効きが悪くなるフェード現象についても解説します。
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-vaporlock-fade/

自動車用途の場合ですが、ローターとパッドの温度が300℃を越えると起きるそうです。

通常ノーマルパッドではフェードポイント(フェードが始まる温度)が300℃~350℃ぐらいに設定されているのに対し、スポーツパッドは400℃~700℃ぐらいになっています。

https://www.dixcel.co.jp/subcontent/literature/literature03.html

ディスクロードバイクでフェード現象は起きるのか?

フェード現象は自動車では教習所で習いますし、その危険性は十分に注意を促されるもののディスクブレーキのロードバイクではフェード現象は起こりえるのでしょうか?十分なデータが無い中ではありますが、思考実験をしてみました。(あくまで私の主観的な意見です。化学的な裏付けは一切ありません。ご注意ください。)(こんなデータがあったよ!というのありましたら是非お知らせください)

ディスクロードバイクのブレーキパッドでフェード現象が起きうる温度のデータをネット上では見つける事は出来なかったので、自動車と同じ300℃程度と仮定します。
次に考えるべきは、ディスクローターが自転車の重量と速度域で300℃まで達する事が出来るのか、ですが、これについてもデーターが無いので、先ずはスチールのテンパーカラーを使って考えてみたいと思います。

金属には固有の色があり、これは金属表面からの反射光の干渉によって生じるもので、酸化膜の厚さによって色調は変化します。鋼材の場合、この酸化膜は加熱温度によって色が変化します。これを一般にテンパーカラーと呼んでいます。

https://www.weld.nipponsteel.com/techinfo/weldqa/detail.php?id=27TQYD2

すなわち、ローター表面の色味を見ることでそのローターがどのレベルの熱に晒されたのか大まかな予測をすることが出来るのです。

↓下の画像はパッド交換をせずにブレーキを使い続けたためにパッドの地金でローターを削ってしまい、中の地金のアルミが見えてしまっている状態です。Shimano純正のローター(下のRT-MT900等はアルミをスチールで挟んだサンドイッチ構造をしています。以下「Shimano純正ローター」と書いた場合はアイステクノロジー採用のRT-MT800, RT-MT900, SM-RT800, SM-RT900を意味します。)はアイステクノロジーフリーザ構造を持っており、高放熱の黒いペイントが塗ってありますので、このような極限状態の使用域でもローター温度が200℃付近(黄金色になる)にすら行ってなかったのでは?と思わせます。

ツイッターのTLで見ていてもローターに焼き色が付いているのは記憶にありません。200℃付近の薄っすらとした黄金色すら色が付いているローターは見た記憶がないので、Shimano純正のローターの放熱性が優れているという証左なのかもしれません。(ブレーキパッドは何を使われているか分かりませんが、Shimano純正が多いと推察します)。もちろん今回の思考実験はなんの科学的な根拠もないのでフェード現象が起きない、なんて断定的な事は言えませんが、少なくとも放熱性の高いShimanoの純正ローターを使っているうちはフェード現象は起きにくそう、くらいは言ってもよいかもしれません。

Shimano純正以外のローターの場合は?

Shimano純正ローター(と純正パッド)の放熱性が優れていて、純正品を使っている限りにおいてはフェード現象のリスクは低そう、という事はなんとなく分かりましたが、ではShimano純正以外のローターを使った場合はどうでしょうか?

前回の「安価な紐引き油圧ブレーキを選ぶべきではないこれだけの理由」 で引用させて頂いた↓下のイギリス人Youtuberの動画に答えがありました。

使ったキャリパーはアリエクで一番安く買える紐引き機械式ディスクキャリパーでお値段なんと、前後セットで約3400円。ローターは同じくアリエクで買った激安品という組み合わせです。スチールから打ち出した6穴タイプですね。

引用元 https://youtu.be/qrD1Ln7H8H8

動画内では、使ってみたところ放熱性が最悪でブレーキの効きも悪く「Sponge feeling(スポンジの様な感触)」と言っていたので、フェード現象が起きていた様です。ローターを見ると見事に青色が付いてます。ローターが300℃付近の熱に晒されたものと推察できます。

引用元 https://youtu.be/qrD1Ln7H8H8

で、この人もテンパーカラーの話をしているのですが、「はっはっはっ!300℃付近までローターが熱くなっていた様だね(笑)このキャリパーの放熱性能は最悪だね(笑)」とコメントしており、笑ってる場合じゃないだろ!と突っ込みたくなります。

引用元 https://youtu.be/qrD1Ln7H8H8

という訳で、Shimano非純正ローターと激安機械式ディスクキャリパーを使った場合はロードバイクでもフェード現象が起こりうるという事が分かりました。

自動車とロードバイクのディスクブレーキの比較

今回の話としては
①Shimano純正ローターの放熱性能は高いので、フェード現象は起きにくそう
②放熱性の悪いローターやブレーキキャリパーを使用した場合はフェード現象が起こりうる
という事ですが、色々調べている中で面白い動画を見つけたのでおまけ的に紹介したいと思います。

それが↓こちら。いわゆる破壊系Youtuberって奴ですね(笑)

SRAMのクロスカントリー用(4ピストンタイプ)のディスクブレーキを巨大な旋盤機械(lathe)にくっつけて、フルブレーキング状態でゴリゴリと回してどうなるか実験しよう!というエピソードです。

ちなみに自動車用ブレーキで実験した時は大爆発したそうで😱 さすが海外の破壊系Youtuberはスケールが違います。

引用元 https://youtu.be/v3sPuf-Dlmg

実験条件は旋盤にSRAMの4ピストンディスクブレーキを括りつけて800rpmで旋盤を回してフルブレーキング。自動車用ブレーキの様に爆発するか?という内容でした。とにかくこの人は爆発させたいみたいですね。
700x25Cのタイヤ周長が2.105mなので、800rpmだと1分間に1684m、すなわち約時速100km/hです。普通ではありえない速度域かつブレーキをしても100km/hで回され続けるので、メーカーでもこんなテストはしないでしょう。見てる分には面白いですが。

引用元 https://youtu.be/v3sPuf-Dlmg

2:32から早速実験開始
2:43 開始10秒ほどでローターが真っ赤に加熱します
3:13 開始から41秒でブレーキが完全に死亡。まったく効かなくなりローターも色が戻りました。

引用元 https://youtu.be/v3sPuf-Dlmg

実験終了後、分解するとローターは灰色になっており、前述のテンパーカラーチャートを見て頂ければローターが400℃以上に加熱されていた事が分かります。また熱でお皿型に変形していますね。
ちなみにこの方、ローターを爆発させられなかった事が残念だった様で自転車用ブレーキは1つのローターに2つのブレーキを付けなきゃダメね。なんてコメントしていました。

引用元 https://youtu.be/v3sPuf-Dlmg

実は鉄は熱せられている時の色である程度の温度を知ることができます。それが↓です。

鋼の熱処理 からだで感じる熱処理の温度

温度は温度計で測定するのが一般的ですが、昭和50年以前の熱処理作業においては、加熱温度や焼入れ冷却中の品物の温度は、色を見たり手や肌で感じる感覚で温度を測っていました。その一部を日立金属の資料で紹介しています。

それをふまえて上の動画の自動車ローターの加熱時と自転車用ローターの色味を見比べてみると明らかに自動車用ローターの方が白く=より高温になっています。1000℃前後の温度はありそうです。

引用元 https://youtu.be/v3sPuf-Dlmg

ここから言えるのは、当たり前と言えば当たり前の結論ではあるのですが、より重くより速い速度域で使われる自動車用のブレーキの生み出す制動力は自転車用ディスクブレーキとは比較にならない程大きい、という事です。
言い換えると、これも当たり前ではあるのですが、比較論で考えた時には、フェード現象は自動車用ブレーキの方が自転車用ブレーキよりも起きやすい、と言えそうです。制動力が大きい=発生する熱が大きい。
もちろん、だからといって前述の通りディスクロードバイクでフェード現象が絶対に起きないわけではないので、読者の皆様におかれましては安全運転をよろしくお願いします。

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筆者情報(初投稿時)

名前: てり~ Twitter @TerryRinRoadbik
年齢: 1985年産まれ36歳
身長: 176cm / 体重: 60~62kg / 体脂肪率: 9~11%
自転車歴: 2021年1月1日~
年間走行距離: 16,000~ km (2021年10月19日時点) (9割がズイフトです)
FTP: 243W / CTL 120~125

ライドスタイル: ズイフト、ロングライド、ファストラン、通勤、ヒルクライム
所有車両: CARERRA TD-01 AIR DISC (外乗り用) / TADA No. 74 (ズイフト用) / GARNEAU GARIBALDI G2R (通勤&グラベル)
大学卒業後、無職を経験。オーストラリア人の彼女(現妻)と国際結婚するために仕事だけを生きがいに頑張っていたら気が付けば30代も後半に「自分には何も無い人生」に失望し、一念発起して-27kgのダイエットに成功、その後ロードバイクに出会いロングライドの楽しさに目覚め、無謀にも「キャノンボーラー」を目指す。「今が人生で一番楽しい」「残りの人生で一番若いのは今日」をモットーに頑張っています。0歳と6歳男児のパパでもあります。
ファストラン記録:チバイチ523km 22時間26分 (2021年10月15日)
          東京湾イチ252km 13時間17分 (2021年7月22日)