てり~キャノボ後編1

2022年1月27日

前編のあらすじ

てり~キャノボ準備編 | キャノンボーラーに憧れて
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はじめに この度は私の大阪→東京キャノンボールへの挑戦に身に余る応援を頂きまして本当にありがとうございました。ロードバイクに乗り始めてほぼ1年でキャノンボールという大きな目標を達…
https://becannonballer.com/2021/12/17/post-867/
てり~キャノボ前編 | キャノンボーラーに憧れて
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てり~キャノボ当日の条件と作戦 さて、いよいよ私のキャノボ挑戦を当日の朝から書いて行きたいと思うのですが、その前にもう一度当日の風や気温の条件やそれに対する私の作戦を書いておこう…
https://becannonballer.com/2021/12/21/post-896/

弱者の戦略、全コース追い風の日を狙うも家族峠や体調を鑑みて、2021年12月12日に決行し、大阪梅田を11:13に出発したてり~。520kmを四分割した最後の130kmに御殿場の登り、246号のアップダウン、渋滞、最大風速11m/sの向かい風という四重苦が待ち受けるコンディション。大阪市街地から伊賀を越え、四日市から名古屋市街を抜けるまでの長い信号峠を乗り越え、多くの方の迎撃により応援のエネルギーを貰い、なんとか貯金を30分つくり、ついに待ちに待った強い追い風が吹く静岡区間に入るのだった。

豊明~浜名湖~金谷

(ここからは一人称現在形でお送りします)

ようやく長い市街地区間の四日市~名古屋を抜けた。見るからに信号が減る。予報通り良い追い風が吹き始めているのを感じる。ここから沼津まではキャノボの中ボスと言われる夜鳴き峠のある金谷を挟んでグロス速度を稼ぐ区間だ。時刻は18:49、12月なのでもう真っ暗だ。暖かい日を選んだお陰でこの時間でも気温は13℃ある。177km終了で貯金は30分。まだ半分の260kmまでも来ていないが市街地区間を貯金30分死守しながら抜けれたことは大きい。まったく悪くない。脚も気力ももちろんまだまだ十分ある。

豊明の先の知立も特に何もなく追い風と急激に少なくなった信号のおかげで32km/hで気持ちよく巡航できる。このペースなら追加の貯金も問題なく積めそうだ。ここからが貯金の稼ぎ時。ただ焦ってはいけない。あくまで本番は最後の130km、御殿場の登りと246号のアップダウンと渋滞と向かい風の四重苦だ。その最後の区間に脚を残す為にどんなに気持ちよくても踏みすぎてはいけない。踏み過ぎない様に踏み過ぎない様に、自分に言い聞かせながら淡々と漕いでいく。

時刻19:55、スタートから8:42、203km終了。知立~岡崎を抜けて豊川へ抜ける間に少し登りがあるが道が良く追い風も気持ちよく吹いているので失速する事なく一気に通過。気温は相変わらず13℃あり、暖かい当たり日を選べたことに安堵する。

豊川~豊橋も四日市~名古屋の信号地獄区間に比べれば信号は断然少なく、何処までもまっすぐに伸びた気持ちの良い道だ。追い風も気持ちよく吹いてグイグイ進んでくれる。
時刻20:42、スタートから9:29、225km終了。貯金は44分、1時間のグロス速度27kmを達成。見た事ない数字だ。これが追い風の力かと感心する。まさに爆進。時間帯が夕方から夜に変わり始めてだんだんと車の数も少なくなってくる。これくらいの車の数が一番走りやすい。実は追い風の他に、車という前方投影面積の大きな物体が動くことによる走行風アシストも大きく速度に影響する。車は適度に流れていくれた方がロードバイクは更に早く走ることが出来る。
あっという間に豊川を走り抜け豊橋に入る。橋を渡った後に1号線を左折し、路面電車と少しばかり並走する区間に入る。残念ながら路面電車とは遭遇はしなかった。そしてすぐに路面電車の線路を跨ぐように右折する。線路のギャップが少しあるので注意を払いながら無事通過。この注意ポイントもすべて「東京⇔大阪キャノンボール研究」さんの情報で予習済みだ。

このキャノンボールの1号線ルートを走る時に見れるのが豊橋市岩屋町にある「岩屋キャノンボウル」だ。1号線ルートを走るキャノンボール挑戦者はここで写真を撮るのが習わしとなっているが、今回はツイッターは基本封印。1分を大事にしていく作戦なので、「おーこれがあの有名なキャノンボウルかー」と思いつつ通過。

無事に豊橋を抜ければ静岡県境は目の前だ。

時刻21:16、スタートから10:03、239km終了。貯金45分。特に大きな感慨もなく引き続き追い風に背中を押されながら静岡県に入る。浜名湖手前のバイパスを回避する為に左に逸れる道も無事にクリア。海岸線間近だからか追い風が更に強くなる。風に乗ってもっともっと速く走りたくなるが自制する。本番はここではない。今は30km/hオーバーが出ていれば十分。焦るな。力も感情も最後の130kmに取っておくんだ、とひたすら自分に言い聞かす。まだ半分も終わっていないのだ。まだ夜は長い。貯金もある。まったく焦る必要はないんだ。

そしてついに今回ちょっと楽しみにしていた浜名湖湖上の橋を走り抜ける。が、暗い。まったく何も見えない。明るい時間に走ったらさぞや良い景色が見えるだろうというのがなんとく雰囲気で分かるが今はまったくの闇夜が見えるだけだ。見えないものは仕方ないので走りに集中する。絶好調の追い風が吹き車の走行風アシストも合わさると42km/hくらいまでスピードが伸びる。流石噂の浜松バイパス。これは気持ちいい。ただ、下ハンを持ってスピードに乗れば乗るほどリスクは上がるので一層気を引き締める。とにかく安全に事故無く。

浜名湖の橋を渡り終えた直後、「てり~さん、がんばって~~~!」と大きな声援が!今回のキャノボは迎撃祭りで本当にありがたい。応援を力に変えて強く進むと改めて気合を入れる。しばらくしてから信号待ちでツイッターを確認したら私のチバイチ24Hの前にハーフ中山道でキャノンボールを達成され、ブログ記事の内容や補給戦略を大いに参考にさせて頂いたにんにんさんだ!本当に嬉しい。今すぐ引き返してキャノボ談議に花を咲かせたいくらいだが、それは出来ない。今は追い風に乗ってひたすら前に進むのみ。

心配していた気温は相も変わらず13℃あり、寒さは全く問題ない。これならサドルバックに詰めてあるゴアテックスのレインウェアを着こまなくてもまだまだ行けそうだ。信号は少なく、追い風は強く、快走だ。

そしてついに、半分の260km終了。時刻22:03、スタートから10:50。海岸線の強い追い風に吹かれ執念の貯金1時間10分。満足な数字だ。半分の地点で1時間以上の貯金が出来れば本当に御の字だ。心の余裕も少しできたので思わずツイートをする。チバイチ24Hを走った時は半分の260km過ぎた時に結構な疲労感を感じて「ここで終わって銭湯に入って電車で帰ったらどれだけ気持ちいいだろうか」なんて思ったが、幸いな事に今回の260km地点の疲労感はチバイチの時より軽い。いつも自分に言い聞かせている、半分終わってからが本番だと。260kmまでは誰でも走れる。気持ちよく終われる。ここからが、この時間からが本番だ。大丈夫。身体の芯からまだ力が溢れるのを感じる。ここまで背中に大量に積んできた固形物の補給も予定通りこなせている。大丈夫、闘志は漲っている。決して余裕を失ってはいけない。安全が第一だ。まだ焦る時間ではない。感情を気持ちを抑えて、粛々と淡々と漕ぎながら最後の130kmの為にに余力を残しつつ、この静岡区間で更に貯金を稼がねば。

浜名湖を抜けた先、天竜川を渡る手前で国道1号線が8kmばかり北を向く。途端、もの凄い横風を左から受ける。吹き飛ばされて車道にふら付かない様にしっかり車体をコントールする。体力を使うがほんの少しの辛抱だ。逆にこれだけの追い風を受けていたのだなと改めて感心する。良い風が吹いている。この追い風に乗ってしっかり貯金を作っていけば行ける、と自分に言い聞かせる。天竜川手前のバイパスは自転車侵入禁止なので 「東京⇔大阪キャノンボール研究」さん の事前情報通りに手前を右折して迂回路へ逃げる。今回のキャノボで何度感謝をしたか分からない。これらの事前情報が無ければルートに迷いとっくに貯金など使い切っていただろう。20分ほどで無事に横風区間を抜けた。また背中に気持ち良い追い風を受ける。

袋井を走っていると前方に分かりやすくライトを振ってくれている方が。こんなに遅い時間なのに迎撃の応援をして頂いた。本当に感謝しかない。応援の力をグッと噛みしめる。

また「東京⇔大阪キャノンボール研究」さん の事前情報通りに県道を通って1号線のバイパスを回避。この先はキャノンボールの中ボスと言われている金谷峠(=夜鳴き峠)だ。だいたい150m登る。
峠の手前まで来ると車が殆どいなくなる。大半の車は走りやすいバイパスの方に行ってしまうからだ。ここまでずっと幹線道路上を走り続けていた中で久しぶりに感じる静寂。そして峠の登りが始まる。金谷峠を走るのは初めてで、「キャノボの中ボス」と聞いていたので身構えていたが自称クライマーなのでこれくらいであれば大したことはない。無理をし過ぎない出力で、15km/h程でダンシングしながらのろのろと進んでいく。それにしても街灯一つなく暗い。車は一台も走っていない。追い抜き禁止の為、道幅も広くはない。出力的には抑えに抑えてぜんぜん踏んではいないが、やはり登りではどうしても汗をかいてしまう。13℃の気温が暑く感じる。サイジャのフロントジッパーを空けて少しでも体温を調整する。そうこうしていると、後ろから聞こえるエンジン音。トラックだ。こんな真っ暗な道で轢かれたらひとたまりもない。何せこの道は追い抜き禁止の黄色線だ。道幅も狭い。ぎりぎり横を通過される恐れもある。身構えて雑草の茂る左端による。半身は雑草に埋もれる。草や路面状態に構っている場合ではない。死ぬかもしれないのだ。エンジン音が更に近づき、横を抜けていく。幸い優しいドライバーさんだった様で黄色のセンターラインを割って大きく迂回してくれた。ふぅ、と息が漏れる。何事もなくやり過ごせて良かった。気を取り直して登坂再開。また真っ暗な道に静寂が訪れる。今回フロントライトはVolt400とRN1500を2つの3灯体制だが、Volt400は昼からずっと点滅運用。この暗闇でも登りでは大きな危険はないのでバッテリーを出し惜しみしてRN1500は1つだけのローモードだ。あまりに暗いのでVolt400の点滅が少し目に染みる。登るのに困らない範囲の地面はちゃんと見えているが少し目線を先にするとそこは漆黒の闇だ。時刻は23:44、「夜鳴き峠」という看板がちょっと怖い。お化けでも出てきそうだな、などと場違いな事を思う。気を取り直して、走りに集中して踏み過ぎない様にダンシング。淡々と粛々と。
30分程であっという間に150m程を登り終える。キャノンボーラーが良く知る金谷峠の山頂のラブホが見える。我ながら舐めプだが、中ボスという割には大した事なかったと感じる。だが、良い事だ。ここから沼津まではもう一度平坦でグロスを稼ぎ、沼津まで行けばもうラスト130km、御殿場の登りと246号のアップダウンだけだ。
気温は山頂でも10℃ある。本当に良い日を選べた。登りの速度で当然グロスは削れたが、ここで焦ってはいけない。むらたくさん(Twitter@SHIMANO_BAND)のキャノボレポートを思い出す。むらたくさんは金谷峠までに1時間20分の貯金を作ったが、金谷峠からのダウンヒルで低体温症になり大幅にペースを落とされてしまいDNFとなってしまったのだ。防寒対策の為の時間はしっかり取る、と強く心に決めていたのでラブホの壁に自転車を立てかけて、前を空けていたサイジャのジッパーをしっかり締め、サドルバックからモンベルのサイクルドライシェル様を取り出し着こむ。まだ気温は10℃あるので、同じくモンベルのゴアテックス生地のレインパンツとスキー用グローブはサドルバックに仕舞っておく。(↓ちょうど3枚目の看板の横に自転車を止めてレインジャケットを着こみました。)

ここで事件が起きる。止まったついでと思い、Garmin Edge830(以下、サイコン)のバッテリー残りが44%になっていたので充電をしようと思い、充電機能が付いている激重大バッテリー中華スマホのBV9100に繋ぐ。ん?なんかいつもと違う。今までBV9100で何度も充電してきたが、「GARMIN」と表示された画面に機器と接続された事を示すピクトグラム。。。なんだこれは?今までこんな画面見た事ないぞ。嫌な予感がして電源ボタンを押すが反応しない。だめだ。サイコンがリセットされてる!少し青ざめる。キャノボなんてGPSログを取る為に走っている様なものだ。「ルートもサイコンに入れてあるし、このままログなしで走ることは出来ない!」と思い、とりあえず充電ケーブルを抜いてサイコンを再起動。バッテリーは44%あるので、このまま残りのバッテリーで走れるところまで走って最大限ログを残して、あとはスタート時刻とゴール時刻でやるしかないと思い直し、ルートを再設定して出発。ルートのデータを三分割にしておいて本当に良かった。おかげでルートの読み込みが早い。まだ気持ちが動揺しているが切り替えて金谷峠のダウンヒルに入る。RN1500は出し惜しみせずに最大光量の1500ルーメンだ。ここで使い切ってしまってもまだもう1本残っている。元よりそのつもりだ。これが私が安全に払える最大限の重量コストだ。

金谷~藤枝~静岡~富士~沼津

無事に金谷峠を下り終わる。やはり頂上でちゃんと着込んでおいてよかった。ドライシェルの薄っぺらな生地だが、素晴らしい防寒性能だ。透湿が効いているため汗冷えも最小限だ。課金アイテムの力はすげぇぜ。

Stravaに切れたログが上がったためDNFしたかと心配されたので、信号待ちの隙をみてツイート。

すると、ぅさん(Twitter@KpyfsHDM5DE97OS)からリプが。良かった。ログは切れても後から繋ぎなおせるのか。少なくともサイコンのバッテリーが切れるまではログが残るのでそれなりのデータにはなる筈だ。東京に入る手前くらいまでは持つだろう。首都近郊まで行けば土地勘はあるのでルートはなんとかなる。とにかく11:13前までにゴールすればいいのだ。ようやくサイコンのログが切れてしまった動揺から立ち直り、気持ちを切り替える。

時刻24:23、スタートから13:10、313km終了、貯金1時間3分。金谷峠を下り終え、橋を渡り終わった先でサイコンのルートが左に曲がれと指示。見るとバーチャルパートナーが並走する国道1号線を走っている。今いる場所はどっちのルートを走るのが正しかったのか。。。思い出せない。思考が回っていないわけではないが単純に予習不足だ。まさかこんな何もない所でサイコンに惑わされるとは。少し悩むが、ここまでルートのデータ通りに来たのでサイコンの指示を信じて左折。並走する1号線に合流する方向に向かう。直ぐに1号線まで出るが、何かがおかしい。山々を繋ぐ高い高架。どこにも入れるスロープなどない。ここに来てサイコンが間違っている事を確信する。これはバイパスだ。くそう。ここに来てこんなどうしようもないミスで貯金を失うとは。どうやらサイコンがリセットされた後にコース途中からルート設定した所為でリルートがかかってしまった様だ。(高級サイコンであるガーミンさんはいい加減自動車専用道路に自転車をリルートするバグを直した方がいい)
ちくしょう!と叫ぶがどうしようもない。他にルートもないので来た道を急いで引き返す。本当に無駄な時間だ。結局、4km、12分をロスした。

気を取り直して藤枝を抜ける。つぎはプチ峠の宇津ノ谷峠だ。岡部バイパスは走りやすい道で、夜間の為車も少なく右車線に逃げてくれる為、快適だ。道の駅宇津ノ谷峠がまるで高速のPA様で自転車で高速道路を走っている様な気分になる。不思議な感覚だ。

引用元; Google Map

その先のトンネルは車道を自転車が走って良いので車の迷惑にならない様に全力で駆け抜ける。静清バイパスを避けて国道1号線に抜ける道でまたルートミス。国道1号線を走れる道なのに変な脇道を走ってしまう。予習不足は大いに反省するが、先ほどルートミスの所為で自分で入れたサイコンのルートが信用できなくなってしまっている。また5~10分ほどのロス。

時刻01:40、スタートから14:27、346km終了、貯金1時間16分。気を取り直して国道1号線に復帰すると静岡市の市街地を突っ切る区間に。久しぶりの信号峠。暴走族対策なのか信じられないくらいに信号の繋がりが悪い。追い風はまだ吹いてくれているので30km/h巡航に乗せても直ぐに信号で捕まる。どうしようもない。焦るな、焦るなと言い聞かせながら、早く市街地区間が終わってくれと祈る。この時間になりツイッターも静かになる。孤独の時間だ。ここから朝が明けるまでしっかりと走り切れるか。

時刻02:29、15:16、363km終了。ようやく静岡市内の信号峠を抜ければついに駿河湾だ。海岸線近くになり追い風が強くなるのを感じる。車の走行風アシストも入ると42km/hまでスピードが伸びる。良い感じだ。このまま最後の貯金を稼ぎたい。と思ったのも一瞬。深夜帯なので車が全然走っていないので走行風アシストが続かない。一気に失速して32km/hに。仕方ない、ここは人力と追い風だけで頑張るしかない。信号も先ほどとは打って変わって殆どない。新富士はもう目と鼻の先だ。

富士川を渡るのは旧東海道の富士川橋ではなくショートカットの為に南側の新富士川橋を渡るのが一般的だ。ここでも 「東京⇔大阪キャノンボール研究」さん での予習通りに土手の階段を担ぎ上がって歩道を走行する。プチ難所も無事にクリア。

時刻02:53、スタートから15:40、374km終了、貯金1時間16分 。新富士川橋を渡り終えて、そろそろかなと思っていたら明け方一発目のツイートはやっぱりあの人だった。オガクズさん(Twitter @ogakuzukunn)だ。私のツイッターのTLの変態早起きローディーの筆頭格。この方ほど「この人いつ寝てるんだろう」を体現している人はいない。そして超つよつよローディー様。予想通りの時間に予想通りの人から応援が来てほっこりする。さて、新富士を抜ければ沼津はもう目の前だ。
富士市市内は自転車通行禁止の区間があるので一旦左折して少し北上してから右折するというルートを取る。ここも予習通り問題なくクリア。

時刻04:38、16:25、392km終了、貯金1時間20分。ついに4分の3が終わった。JR東田子の裏駅の前を過ぎた辺りでサイコンから「デロデロデーロ♪」とコース終了の合図の音が流れる。コースを3分割にしていたので、2つ目が終わったのだ。ついに3つ目。最後のルートを素早くセットする。残りは137km。沼津から御殿場を越えて最後の246号だけだ。疲労感は悪くない。ここまで抑えに抑えてきたのだ。大丈夫まだまだ踏める。ここからが本当の本番だ。

富士を抜けて沼津までは直ぐの筈(実際には30分程度)だが、体感で時間が進むのがえらく遅く感じる。気持ちばかりが逸ってしまっている様だ。なかなか沼津に着かないなと思いながら闇夜を突き進む。沼津バイパスは真っ暗だがとても走りやすい。ようやく沼津バイパスから左折して御殿場ルートに入る地点まで来た。ここからは「キャノボのラスボス」と言われる御殿場を通る長い登りが始まる。背中の食料もちょうど空になった。補給戦略は今のところ成功している。適当なコンビニで最初で最後の補給をしなければ。

時刻は朝4時前後となり早起きの方々が早速応援のツイートを送ってくれていた。本当にありがたい。

時刻04:09、スタートから16:56、404km終了、貯金1時間22分。なんとかここまでに1時間半弱の貯金を稼ぐことが出来た。今はルートミスのロスは気にしないでおく。もう前に進むしかないのだ。御殿場への登りの山道に入ってしまうとコンビニなどないので、早く適当なコンビニに入らねばとキョロキョロとしているとポツンと入りやすいセブンイレブン(沼津熊堂店)があった。ちょうど左側にあるし完璧だ。さっと自転車を走らせて入口近くのバリケードに立て掛けさせてもらう。先ずはさっとトイレを済ませる。ビブではないので一瞬だ。買うものは決めてある。ここから先はもう固形物は取らない。ここまで固形物を取り続けて来たので胃はかなり疲れている。実際4つ買った「タンパク質の摂れるチキン&エッグサンドイッチ」は最後の1つを食べる気にならず手を付けていなかった。inゼリーのラムネ味を3つとマスカット味を2つとポカリ1本を素早くカゴに入れて会計。支払いはスマートに右腕に着けているGarmin Venu sqのスイカで。数秒が惜しいのだ。買ったゼリー飲料はPekoさん謹製の反射ベストにぽいぽいと入れる。ちょうど収まった。本当に凄い収納力だ。流石にゼリー飲料5つはずっしりと重い。直ぐに出発したいところだが焦ってはいけない。これから最も寒い時間に最も寒い御殿場へと入るのだ。防寒対策の為に金谷峠の下りでは履かなかったレインパンツを履く。ついでに直ぐにスキーグローブも直ぐに使える様にサイジャのバックポケットに。ドライシェルを着ているので少し突っ張るが問題ない。慌てて飛び出したい気持ちを抑えつつ、出発前に忘れ物が無いか辺りを指さし確認して出発。よし。タイムロスは10分程度か。悪くない。

ずっしりとゼリー飲料が5つ詰まった反射ベストの重みに少し満足感を感じながら県道394号ルートに入る。だんだんと登り勾配が始まった。

沼津~御殿場

時刻04:21、スタートから17:08、405km終了、貯金1時間12分。ついに御殿場の登りが始まった。東京→沼津の方向では一度だけ246号ルートを試走した事があるが、沼津→東京の方向で走るのは初めてだ。あまり勾配がきつい登りだとは思っていなかったが違った。裾野バイパスの入り口は結構きつい。インナーローにしてダンシングしてやっとという感じでのろのろと登る。トラックに煽られる。直ぐに自転車走行禁止区間の迂回路である県道394号線に逃げる。こちらは車も少なくぽつぽつとある住宅の合間を走る静かな道だ。何よりトラックがいない。信号はあるがトラックに煽られながら登るよりはよっぽど良い。県道394号線に入ってからはキツ過ぎず緩すぎない登りが延々と続く。「キャノンボールのラスボス」と言われる御殿場だが、ここはまだ本番ではない。本番は最後の246号のアップダウンと強烈な向かい風だ。ここで脚を使い切る訳にはいかないのでひたすらダンシングで自分の体重をつかってのろのろと15~17km/hくらいで進んでいく。予報通りもう追い風はない。ほぼ無風。ここからは自分の脚と体力と気力の実力勝負だ。焦るな貯金は十分にある。ここは貯金を使っていい場面だ。とにかく脚を終わらせない様に。踏み過ぎるな踏み過ぎるなと自分に言い聞かせる。

時刻04:43、スタートから17:30、411km終了、貯金1時間7分。「御殿場まで17km」の看板が見える。もう20~30分くらい登っている気がするが、このペースだとまだ1時間も登りが続くのか。少し絶望的な気持ちになる。流石「キャノンボールのラスボス」と言われるだけはある。踏み込んでペースを上げたくなるが、気持ちを抑える。まだだ。本番はまだなのだ。今はダンシングで体力を温存しながら耐える時だ。淡々とリズムを刻んでいく。気温はだんだんと下がってきた。サイコンの気温表示は7℃。金谷峠で感じた登りの暑さは一切感じない。これから更に気温が下がるのか。

時刻05:13、スタートから18:00、419km、貯金58分。この登りのペースなのでグロスがどんどん削れていく。と思っていると御殿場まであと9kmの看板がみえた。大丈夫、遅いけどちゃんと前に進んでいる。気温はどんどん下がり5℃になった。登っているのに寒くなってきた。裏起毛の長袖と長裾のサイジャに上はサイクルドライシェル、下はレインパンツと着込んでいるのにまるで裸で漕いでいる様に感じる。あまりに寒いのでちゃんと服着てるよね、と思って目線を下に落とす。うん、大丈夫ちゃんと服着てる。そんなお馬鹿な自問自答をしながら気を紛らわす。

てり~キャノボ後編2へ続く

筆者情報(初投稿時)

名前: てり~ Twitter @TerryRinRoadbik
年齢: 1985年産まれ36歳
身長: 176cm / 体重: 61~62kg / 体脂肪率: 9~11%
自転車歴: 2021年1月1日~
年間走行距離: 約20,000 km (2021年) (8割がズイフトです)
FTP: 252W / CTL 110~120

ライドスタイル: ズイフト、ロングライド、ファストラン、通勤、ヒルクライム
所有車両: CARERRA TD-01 AIR DISC (外乗り用) / TADA No. 74 (ズイフト用) / GARNEAU GARIBALDI G2R (通勤&グラベル)
大学卒業後、無職を経験。オーストラリア人の彼女(現妻)と国際結婚するために仕事だけを生きがいに頑張っていたら気が付けば30代も後半に「自分には何も無い人生」に失望し、一念発起して-27kgのダイエットに成功、その後ロードバイクに出会いロングライドの楽しさに目覚め、無謀にも「キャノンボーラー」を目指す。「今が人生で一番楽しい」「残りの人生で一番若いのは今日」をモットーに頑張っています。0歳と6歳男児のパパでもあります。
ファストラン記録:チバイチ523km 22時間26分 (2021年10月15日)
          東京湾イチ252km 13時間17分 (2021年7月22日)
         大阪東京キャノンボール530km 23時間40分(2021年12月13日)