てり~キャノボ前編

2021年12月23日

てり~キャノボ当日の条件と作戦

さて、いよいよ私のキャノボ挑戦を当日の朝から書いて行きたいと思うのですが、その前にもう一度当日の風や気温の条件やそれに対する私の作戦を書いておこうと思います。

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2021年12月12日(日)の風の予報は午前11:00から東向きの風が大阪に吹き始める予報でした。渋滞を考えれば朝5時頃発が望ましいですが、11時より早い時間は風が吹かない為、渋滞のデメリットと風のメリットを天秤にかけて11:00発にしました。ただ大阪11時発というのは本当に良くありません。大阪を日曜日の11時に出るという事はゴールが東京で月曜日の11時になるという事です。平日の朝の渋滞の時間にまさに突っ込む時間です。しかしながら、家庭の事情(家族峠)で大阪に前泊する事は現実的では無かった為、朝11:00であれば横浜から早朝出て現地出発に間に合うのでよしとしました。また12月にしては非常に暖かい日で全区間で10℃を越えるというのも大きなメリットでした。

心配だったのは最後の神奈川に入った区間から向かい風になる事。元々アプリのWindyでは大阪11:00発でぎりぎりゴール前までは神奈川~東京区間は無風の予報だったのですが、最終的に向かい風となってしまいました。しかも結構な向かい風です。Windyでは風速11m/sの向かい風でした。私は520kmのライドを130km x 4セットで考えています。大阪→東京のキャノンボールは体力的に余裕の無い最後の4/4の130kmに最も厳しい登りの御殿場と246号線の果てしないアップダウンが待ち受けています。そこに更に月曜朝の渋滞と最大風速11m/sの向かい風が足されるわけです。DNSをするか本当に迷ったのですが、これから寒くなりチャレンジがより厳しくなることや、家族峠や自分のコンディションのピークを考えると次の挑戦の機会がいつになるか分からないこと、そしてやはり「初めてロードバイクに乗ってから1年以内にキャノンボールを達成した」という数字に拘ってみたいという自身の矜持もあったので決行する事にしました(納車後、初めてロードバイクに乗ったのは2020年12月24日)。最後は理屈ではない意地とわがままの世界でこの日の挑戦を決めました。

ちなみにこちらの素晴らしいツールはご本人もキャノンボーラー達成者であられる330Kさん (Twitter @330k)が無料で公開して下さっています。24時間の移動に合わせた風向き、天候、気温、降雨量がワンページで一目でわかる大変便利なツールです。出発の22時間前から使えます。私はWindyというアプリで風の傾向を見ておき、330Kさんの「キャノンボール専用 天候・風向き予測」で最終確認という流れで使わせて頂いております。スマホの表示にも対応しています。また330Kさんのブルベへの参戦記事なども大変面白く勉強になるのでぜひ見てみてください。

キャノンボール専用 天候・風向き予測
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https://www.330k.info/software/cannonball-wind-map/

私が取るのは弱者の戦略です。私のFTPはせいぜい4.0 W/kg (FTP 243W)。直近でキャノンボーラー達成者が非常に多い事をツイッターで見られた方も多いと思いますが、ズイフターさんが多く(私もズイフターですが)、FTP 5.0W/kg前後の方が多い印象でした。同じく直近でキャノボールを達成された園長さん (Twitter @adacciai)は豪脚(FTP 310W)で「物理で殴る」を体現したようなスタイルで向かい風をもろともせず、稼いだ貯金でコンビニ補給を適度に入れてきっちり24時間以内でキャノンボールを達成されました。そんなつよつよなスタイルに憧れますが、無い脚は無いので仕方ありません。私が取れるのは弱者の戦略だけです。なるべく追い風に乗り、追い風の弱い区間は頑張り過ぎない。少しでもグロス速度を保つためにコンビニ補給は最低限。今回はキャノンボール中のコンビニ補給を1回のみとしました。とにかく前述の通り最後の4/4の130kmで御殿場の登りと246号のアップダウンと強烈な向かい風と渋滞という四天王が来ることは分かり切っていたので、前半にどれだけ貯金を稼げるかと最後の方に最後の方にと脚を残すことを作戦としました。
私はツイ廃なのでこういう大きなチャレンジの時は頻繁にツイートをしたい派なのですが、今回ばかりは1分1秒の積み重ねが最後の余裕に影響していくためツイートは基本的に封印としました。

24時間は長いです。私がキャノンボールに対してどれだけの情熱と思い入れがあろうと、24時間maxのテンションで情熱を燃やし続ける事は出来ません。人の最大の集中力が持つのははせいぜい1時間くらいです。常にテンションを一定に保つ事が理想ですが、燃えやすい性格の私は特に感情を燃やし過ぎない様に気をつけました。チバイチ24Hの反省で3/4あたりが終わったところで感情が爆発して泣いてしまい、その後に明らかに出力が垂れてしまいました。24時間あれば良い時も悪い時もある。攻める時と守る時を上手く切り替えながら、作戦行動表に沿って淡々と淡々とやるべきことをこなしていく事を心掛けました。

忘れてはならないのは安全への配慮です。キャノンボールは安全第一。24時間以内に走り切って達成だろうが、24時間を越えてしまって完走だろうが、力及ばずDNFだろうが無事に家に帰ることが最優先です。キャノンボール中の事故や怪我は自己責任だけでは済みません。今後のキャノンボール挑戦者やロングライド界隈に迷惑をかけてしまいます。先日のキャノボ中の事故によるヤフーニュースのコメント欄の自転車乗りへの誹謗中傷には大変心が痛みました。一般の方からすればキャノンボールなんて「理解不能な迷惑極まりない行為」。例えそれが卑劣なドライバーによるひき逃げ事件であったとしてもです。残念ながらそれ以上でもそれ以下でもありません。だからこそ後ろ指をさされない様に事故だけは起こさない様にしなければならないと思いました。
今回の挑戦では寒さが問題でした。私なりの寒さ対策で防寒着はフル装備で持っていく事にしましたが、決めていたルールとして低体温症状が手遅れになる前に早めに貯金を切り崩しコンビニでホッカイロなりカップラーメンを食べるなり暖を取る対策を取ろうと決めていました。この余裕を生むために前半に貯金を作っておくことはマストでした。また追い込むことは絶対にNGです。追い込んで思考が鈍ったり余裕が無くなったりしたら、DNFをしようと思っていました。重ねて安全が第一です。

色々と語りたいことが多すぎて長くなりましたが、私の作戦は以下の通りです

てり~キャノボ作戦

  • 追い風も弱く日中走る為渋滞と信号峠の厳しい大阪~名古屋区間は我慢。
  • 豊橋~沼津までは夜間走行になり追い風も6~8m/sになるのでここでグロス速度を稼ぎ貯金を作る
  • 本番は最後の130km。御殿場の登りと246号のアップダウンと向かい風と渋滞。
  • 可能であれば沼津までに貯金を2時間作り、御殿場の登りと神奈川~東京区間の向かい風と渋滞に備えたい。
  • 基本戦略としてのコンビニ補給は1回のみ。
  • 1分1秒の積み重ねを守る為、ツイートは封印。
  • 24時間は長いので感情を燃やさない様にコントロールする事。
  • 寒くなったら迷わず貯金を切り崩し、暖を取る事。
  • 追い込まない。余裕が無くなったら安全第一でDNF。

前回の「てり~キャノボ準備編」の冒頭でも書きましたが。私の知識はすべて誰かからの受け売りです。自分で開拓した知識はほぼゼロと言っても良いと思います。そういう意味では先駆者達が苦労して編み出したテクニックを駆使して挑戦するRTA(Real Time Attack)に感覚が近いものがあるかも知れません。キャノンボール達成の難易度は10年前とは比べ物にならないくらい低くなっているのではないでしょうか。ルート一つとっても先人達が現地を走り抜いて苦労して確立したバイパス回避ルートをなんの苦労もなく使わせて頂いているわけです。重ねてキャノンボーラー先輩方への心からの尊敬と感謝を。願わくば私の挑戦記がまた誰かの糧になり、新たなキャノンボーラーが産まれますように。

てり~キャノボ準備編 | キャノンボーラーに憧れて
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はじめに この度は私の大阪→東京キャノンボールへの挑戦に身に余る応援を頂きまして本当にありがとうございました。ロードバイクに乗り始めてほぼ1年でキャノンボールという大きな目標を達…
https://becannonballer.com/2021/12/17/post-867/

その他のキャノンボールのルール等については最強のアマチュアロングライダーのなるさん(twitter @naruyan81)のウェブページ「青の破片」をご参照ください。記録を持っている方々の名前も載っていますので、これからたくさん貼るツイートの埋め込みがより楽しめる事と思います。

キャノボデータ更新
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青の破片 アオノカケラ
http://blog.livedoor.jp/narutsc/archives/cat_50029187.html

当日朝~出発前

残念ながらまだ本編は始まりません(笑)次に出発前までの行動を書いて行きます。

挑戦前夜は20時前に就寝。

当日の朝は予定通り5:30に起床。やはり緊張で眠れず目を瞑って身体を横にしているだけという時間も長かったですが、一応9時間半はベッドの上にいた計算です。新幹線は7:10発に乗る予定でした。自宅から新横浜の駅までは自転車で20分もかからないので、輪行セットの時間も含めて6:15に家を出れば余裕の計算でした。

↓こんな感じのいつもの朝食を食べ、用意していたサイジャに着替え、充電したサイコンやらライト類をセットして最後に空気圧を最終確認して予定通り出発。忘れ物が無い様に事前にチェックリストを作り、一つ一つ確認して漏れが無い様にしました。

輪行もだいぶ慣れてきて10分で出来る様になり、早めに着いたので予定より10分早い7:00発の新幹線に乗れました。スマートEXで予約していたのでスマホから1分もかからずに予約変更できるのは本当に便利ですね。

おしゃべり厳禁のS Work席。きっちり大型荷物席も取れて出発10分前に予約入れたので3人掛けの横にだれもいない席を選べて横置き輪行でも問題ありませんでした。ただ、これ不安なのは横置き輪行だと3人掛け席の大型荷物スペースを独占してしまうので、他に人が来た時に取り合いになってしまうという事。今回は横に人が来なくてラッキーでした。

一度キャノンボールがスタートすればまともなご飯は食べれなくなりますので、ひたすら食べます。貝づくし弁当1000円は美味しかったのですが、欲を言えば電信レンジで温めてくれるサービスがあれば良かったですね。寒い季節に冷や飯は切なかったです。食べたら寝ます。2時間10分の乗車時間のうち、1時間30分程寝る事ができました。

アラームはセットしていましたが、到着15分前くらいに自然が目が覚めました。昼寝後のけだるさもなく、身体に力とやる気が満ち溢れているのを感じました。コンディションは良い。いける。自分に言い聞かして、ツイートをしました。

新大阪からスタート地点の梅田新道道路元標まで自走しても良かったのですが、最後にお店で座ってご飯を食べてダメ押しのカーボロードをしたかったので、輪行解除をしてしまうとお店に入れない為、自転車を抱えて移動。大阪は不慣れすぎて駅員さんに道を聞き、梅田に行くには大阪駅に行けばいい事が分かり、いそいそと在来線へ。
梅田に着いて直ぐに迷います。なんですか、梅田駅が4つもあって大阪駅と繋がっているとか初見殺しにも程があります(笑)。ここでも駅員さんに道を聞いてなんとかなりました。

失敗したのは梅田駅が想像以上に大きくてビンディングシューズで自転車を抱えてずっと歩いたので疲れてしまいました。肩紐で左肩も痛くなりましたし。次回はタクシーに乗ろうと思います。

スタート地点の梅田新道道路元標の直ぐ南側が東京の銀座に並ぶ西の高級歓楽街である北新地なのですが残念ながらランチはどこも11時からでお店が開いてない為、純度の高い炭水化物が補給できるはなまるうどんへ。ああ、たこ焼きとかお好み焼きとか大阪らしいものを食べたかった。はなまるうどん大阪北新地店は10時開店でお店も広く、まだガラガラでゆっくりと最後の食事を楽しめました。私の補給戦略ではこれが大事で、出発直前まで食べ積む事でスタート後5時間は固形物補給抜きで走ることが出来ます。チバイチ24Hで実証済みでした。

食べ終わって一息いれたら輪行を解除して、次はコンビニでの買い出しです。私はセブンイレブンの「タンパク質の摂れるチキン&エッグサンドイッチ」(これ一つでタンパク質が26gくらい摂れる優れものです)が好きなので、セブンイレブンを探したのですが路面店が少し遠く元標から西に4分程行ったところでタイムロスしてしまいました。元標の直ぐ近くにセブンイレブンがあるのですが、地下街のお店の様で自転車持ち込みができなそうだったのでこちらに行きました。24時間チャレンジは自分の好きな時に出発できるのが良い所ですが、今回は出発見送りに何名か来ていただける様だったので急がねばと思っていました。

たっぷり2312円分の食料を買い込み、PEKOさん(Twitter @ab_peko)謹製の反射ベストとサイジャの後ろポケットに入れました。これだけ入れてもまだ少し余裕がありました。本当にすごい反射ベストです。
補給食の戦略はこれまでの食べ積みによりスタートから5時間は固形物は無補給。最初の5時間のカロリー補給はアクエリアスからのみです。その後、「タンパク質が摂れるチキン&エッグサンドイッチ」を3時間に1回食べて、その間は1時間~1時間半に1回菓子パンを食べます。これで合計15~18時間を持たせて、最後の130km前にコンビニ補給を1回で済ませる戦略です。ネガはこれだけの背負えば当然重くなるのですが、そこは割り切りです。この日の為に身体を仕上げてますので、多少の重量増には目を瞑ります。
飲み物はアクエリエスと水のコンビネーションを基本としつつ、甘い物が飲みたくなったらカルピスを飲んだりと臨機応変に。
これ以外には100kmに1回飲むためのAmino valueの粉の奴。それから追加の塩分補給の為の塩タブレットです。気温10℃強とはいえ、やはり24時間も走り続けると塩分が思った以上に失われます。塩タブレットを摂りすぎるという事はないと思っていますので、塩分補給は冬でも大事です。

PEKOさんお手製反射ベストのレビュー | キャノンボーラーに憧れて
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本当はこれをチバイチで使いたかった。。。。多分、史上最強の反射ベストとなるでしょう。ツイッターでお手製輪行袋の頒布(はんぷ)で有名なPEKOさんが8月から頒布されている新製品の反…
https://becannonballer.com/2021/10/25/post-195/

そうして3分程遅れて11:03にスタート地点の梅田新道道路元標に到着しました。なんと5名の方にお見送り迎撃を頂き、ランドナーでキャノボ達成されたGUTTIさん (Twitter @on_gutti)、キャノンボーラーのLovelybeerさん(Twitter @lovelybeer)、リカベント乗りのえむきゅうさん(Twitter @emukyuM9)、先日フル中山道キャノボの快挙を達成されたモニグラさん(Twitter @y30c)、ズイフトのチームTMRでお世話になっているかつぞ~さん(Twitter @katsuzo_h)にお会いできて記念撮影したり少し談笑したり最後のアドバイスを頂いたりしました。本当はもっともっとお話ししたかったのですが、10分程幸せな時間を堪能した後、2021年12月12日11:13 私のキャノンボールがついにスタートしました。

梅田~伊賀越え~関宿

(ここからは一人称現在形でお送りします)

いつだって、テーパリング明けから本番で漕ぎ出す瞬間は緊張する。2~3日自転車に乗っていないだけでほんの少しだけ不慣れるになる感じ。大丈夫脚はしっかり回る。パワーメーターで150W以上きっちりと出ている。身体全体のコンディションも良い。食べれるだけ食べたのでお腹も満腹だ。予報通りちょうど11時から東向きの良い風が吹き始めて良い感じだ。背中の食料は重いけど幸先の良さを感じる。大阪市内はグーグルマップで予習済みなので周りの交通に気を配りながら先ずは伊賀方面に向けて東にひた走る。信号峠はやはり多い。グロス速度は20km/h弱ほどでキャノボ達成に必要な22km/hを初っ端から下回っているが焦らない。直前に読んだむらたくさん (Twitter @SHIMANO_BAND) のキャノボレポートは本当によかった。「開始20kmはパレードラン」。そう今はパレードランなのだ。存分に大阪市内の景色を楽しもう。
私は根っからの東の人間だから西日本には本当に縁が無くて、自転車で走っていると色々物珍しく感じる。そうこう思っているうちに造幣局の前を通り最初の橋を渡る。大阪は水の都というが綺麗だなと思う。ここで重大なミスに気付く、これまで頭の中の行動表をチェックしながら漏れが無いように気をつけていたが一番大事なツイッターでの現在地共有を忘れていた。信号待ちで慌てて携帯電話の現在地共有をセットしてツイートする。これが無いとキャノンボールは始まらない。ツイッターで応援して下さる皆と一緒に走ってこそのキャノンボールだ。

そうこうしている内に最初の曲がり角のイオンモール鶴見緑地を左折。ここもグーグルマップで予習済みなのでマップを見なくてもすんなり曲がれる。直ぐに花博記念公園前の道に右折して入る。この公園は道路から見える範囲だけでもとっても綺麗で中に寄って写真を撮りたい気後になるが、残念ながら今回はそんな余裕はない。何せツイートをする暇もないのだ。1万5千円も払って観光の一つもせずにとんぼ返り。これがキャノンボールだ(笑)。そんな脳内会話を楽しみながら東に東にひた走る。直ぐに1号線から163号線へ右折するポイントへ。この先は最初の難所である自転車走行禁止の高架とトンネルがある。高架もきっちり回避し最初の階段担ぎ上がりをクリア。次に163号線から左側の側道に逃げてトンネルの手前で道路に架かる橋を渡って反対車線へ。反対車線の歩道に降りる道が不法占拠なのか不法投棄なのか半分ゴミで塞がれていたが、通るしかないので自転車を担いでパス、その下の歩道への合流地点もバリケードが置かれていたがこれも自転車を担いでパス。私道であったなら申し訳ないが、なんとも言えないところ。トンネルをそろそろと歩道を抜けてクリア。この辺までくると完全に山の中で日曜日の昼間なのに歩行者の一人もおらず歩行者の迷惑にならずよかった。東の人間の私からすると少し不思議だ。ここまで大阪の中心の梅田から約17km、西日本を代表する大都市なのに東にたった17km来ただけでもう人っ子一人いない山の中とは。大阪はこの東側の山に守られているというがこうして自転車で走ってみないと土地勘のない人間にはなかなか分からないものである。トンネルを抜けたらそのまま歩道を走ってスロープで上に上がって逆走方向に戻って道路の上の橋を渡って反対車線(進行方向の車線)に復帰。ここまでグロス速度は20km/h弱、信号峠の市街地を抜けて来た割には悪くない。ここからは最初の上り坂のある伊賀越えだ。直ぐに木津川に出る。163号線を順調に東に進む。天気も良く暖かくてまだスタートしたばかりだから体力もあり一瞬キャノボ中である事を忘れる。少しづつ追い風に乗ってグロス速度を回復していく。キャノボ達成に必要な22km/hを切っているがまだ焦る時間ではない。踏み過ぎない様に焦らない様に。まだまだ先は長い。

大河原で予習通りバイパスを回避。初めて走る道なのでこうして回避ポイントをすべて把握できているのは「東京⇔大阪キャノンボール研究」さんのルート攻略のおかげだ。本当にありがたい。

ここで小さなトラブルが。走っているとカチカチと小さな音がする。音が出る時と出ないときがある。こんな所でマシーントラブルなんて勘弁してくれと思いながら、ふと自転車の前側をのぞき込んでみるとなんと3灯あるライトのうちの1つであるVolt400が外れている。大事に至らなかったのは落下防止の為の紐(携帯ストラップ)を取り付けていたからだ。カチカチとういう音は紐で宙吊りになったVolt400が隣のRN1500に接触して出ていた音なのであった。Volt400は3灯の真ん中、サイコンの下に取り付けていたので外れてしまったのがまったく見えなかったのである。出発前には入念に機材チェックをしたつもりだったが、こんな時に限ってライトブラケットの奥までしっかりハマっていなかった様だ。落下防止紐を付けていて本当に良かった。どなた様のレポートか忘れてしまったが、これも以前読んだキャノボレポートでライトを落下させてしまい道を引き返して回収するのに30分ロスしたという経験を読んだからだ。この細い紐1本で救われた時間は計り知れない。

小さなアップダウンを繰り返しながら伊賀へと昇っていく。ここまで65km。あっという間だ。ここから亀山に抜けるまでは最初の登り坂がある25号線の旧道を抜けるいわゆる「採石場ルート」だ。ここも事前の情報通り登り切るまではそこまで道は悪くなく信号も少ないので走りやすい。グロス速度もだんだんと回復し22km/hを上回った。

自称クライマーの私には大した登りとも感じずに直ぐに登り終わる。丁度登り切った地点にある噂の採石場はなかなかの迫力だ。工場好きの私としては自転車を止めて写真を撮ってしばらく眺めていたかったが、そんなわけにはいかない。後半どれだけ余裕があるか分からないなかで今は1分1秒でも時間を無駄にせずに貯金にまわしたい。

引用元 google map

後ろ髪を引かれながらがダウンヒルに入るので気を引き締める。ここからは路面が悪いとの事前情報だ。登りで失ったグロス速度を回復させたいのはやまやまだが無理は禁物だ。まだまだ先は長いのだ。そう思っていると予想以上の悪路。これでは完全にグラベルだ。とにかくパンクしない様に慎重に走り抜ける。殆どダウンヒルの恩恵を受けないままに1号線に合流。直ぐに関宿の町中に入る。1号線のショートカットルートだが観光地のど真ん中を走る為実際はスピードを出せず時間的なショートカットにはならないのだけど、大阪まで行っておきながらまったく観光しないのも癪だったので今回のキャノボの唯一のわがままとして関宿の街並みを見る事にした。スピードを出さずにゆるゆると関宿の風情を楽しみながら走るのは大変気持ちが良い。本当は止まっている余裕はないけど自転車を降りずに写真を1枚だけパシャリ。これくらいのわがままは許されるだろう。

直ぐに1号線に復帰し、気を取り直して速度を回復、ここでようやく100km弱。ここまで飲み物だけで予定通り無補給。ぜんぜんお腹が空いている感じはないので、このまま予定通り行けそうだ。

関宿~四日市~名古屋~豊明

本来はそのまま1号線を走り続けるのだが、幹線道路ばかりでは飽きるかなと思い川沿いを走る道を入れてみた。ここまでずっと車に気を使いながら走っていたので川沿いのサイクリングロードはやはり気持ちが良い。1号線と並走する国道23号線に入り、自転車禁止の高架の手前で左折して1号線に復帰する。左折後は一瞬逆走方向になるわけだがなかなかの向かい風だ。この風に押されて走ればグイグイ進めるだろう。イケる、という感触がして来た。

スタートから5時間が経過し、お腹もようやく空いてきたので背中に大量に備蓄してある補給食を食べ始める。

そうして四日市を抜けて130km。520kmの1/4が終わった。貯金は35分。大阪市街地の信号峠を考えれば十分な速度だ。脚を使い過ぎた感じもない。

ここからの名古屋を抜ける区間はまた信号峠と渋滞の厳しい区間だ。伊賀越えで作った虎の子の貯金30分をなんとか静岡に入るまで守り抜きたい。ここからは守りの区間だ。

市街地区間の信号峠はやはり厳しい。車の数もそれなりに多いので交通の流れを妨げない様に信号ダッシュからしっかりと踏んでいく。追い風が多少あってもこれは脚に来る。ここは我慢の区間だ。名古屋を抜けるまで我慢、我慢とひたすら自分に言い聞かせる。

信号が多いのでようやくツイートを見る余裕が出て来た。私のスタートのツイートにとんでもない数のいいねがついてる。#てり~キャノボで呟いて下さる方もたくさんいて、ツイ廃としては今すぐリプライしたいけどキャノボが終わった後と心に決めて、とりあえずリツイートしまくる。本当にありがたい。ロングライド挑戦中の応援ほど力になるものはない。

信号峠に足を削られながら三重県を抜け、ついに愛知に。1号線の行く先に迫るのは木曽川だ。木曽川の橋は通行禁止ではないが車道にまったく余裕がないので、ここも「東京⇔大阪キャノンボール研究」さんのルート攻略情報通りに素直に歩道を走る。歩行者も対向の自転車も来なかった為スムースに走ってく。数十m毎にあるスピードを出せない為の凸が邪魔くさいが、下に配管パイプを通す為の様な台形形状しているので、乗り越えるのが面白くなくもない。 「東京⇔大阪キャノンボール研究」 のばるさん (Twitter @barubaru24)が電池を落とされてしまったというのもうなづける。

プチ難所の木曽川を無事に渡り終え、ついに名古屋に!ただ相変わらず信号峠はキツイ。グロス速度を落とさない為に我慢、我慢と言い聞かせながらしっかり踏んでいく。何とか貯金30分はここまで死守できている。このままこの貯金を守っていくと強い意志を持つ。

そしてここで本当に嬉しい道中での最初の迎撃が。ハムさん(Twitter @hamtrogation)だ!しっかり動画もアップして頂きテンションが上がる。名古屋の信号峠の辛い時間にこれは本当に嬉しい。

直後にフォロワーのとらいさん(Twitter @to_ra_i)にも迎撃してもらう。迎撃という文化はキャノンボールならではというか、大都市を跨いで走り続けるまさに本来の意味の「キャノンボール」の所以たる素晴らしい慣習だと思う。私も積極的に迎撃の応援をしようと改めて心に誓う。

ツイッターではかなり応援いただき、信号峠はキツイ区間だけどテンションを上げて名古屋の市街地を抜けるまでと言い聞かせる。我慢の時間もあともう少し。

迎撃してもらったスーパージャンボの先は自転車通行禁止区間なので直ぐに右折して左折して回避してからまた東海道に復帰する。ようやく信号峠の名古屋も終わりが見えて来た。早く名古屋を抜けろ~抜けろ~と呪いの言葉を吐きながら青信号ダッシュでしっかりペダルを回す。

そうして豊明の手前くらいまで来てようやく目に見えて信号が少なくなる。やっと信号峠を抜けきった様だ。貯金は30分を死守できている。ここからは追い風も強くなりグロス速度を稼げるボーナス区間だ。辛く長い守りの時間が終わり、ようやく攻めの時間だ。(175km、7:32)

豊明の手前。ここでまたも嬉しい迎撃が。みきさん(Twitter @miki_mielikki)だ!信号待ちで記念撮影して頂き、パチリ。これだけの身に余る応援を受けて絶対にキャノンボールを達成しなければと気合が入る。

豊明を抜けると、今度は今回のキャノボの計画で非常に参考にさせて頂いたレポートを書いて下さったむらたくさん(Twitter @SHIMANO_BAND)からの迎撃が!本当はキャノンボール話に華を咲かせて色々お話してみたかったが、こればっかりは仕方がない。この応援を絶対に無駄にしないと、力とエネルギーに換えて前に進む。

追い風もだんだんと強くなっているのを感じる。信号峠も抜けた。貯金も30分ある。当たり前だがまだ半分も来ていないので気合も体力も十分だ。補給食も背中にまだたっぷり詰まっている。立て続けに迎撃して貰った応援のエネルギーもある。ここからは攻めの静岡区間だ。私はニヤリと笑った。

後編に続く。

お願い。当ブログは立ち上がったばかりの新興ブログでグーグル検索にも引っ掛からずサーバー代すら賄えておりません。つきましては、少しでも「面白い」「参考になった」と思っていただけましたらツイッター等のSNSで拡散を何卒お願いします。

筆者情報(初投稿時)

名前: てり~ Twitter @TerryRinRoadbik
年齢: 1985年産まれ36歳
身長: 176cm / 体重: 60~62kg / 体脂肪率: 9~11%
自転車歴: 2021年1月1日~
年間走行距離: 19,000~ km (2021年12月1日時点) (9割がズイフトです)
FTP: 243W / CTL 120~125

ライドスタイル: ズイフト、ロングライド、ファストラン、通勤、ヒルクライム
所有車両: CARERRA TD-01 AIR DISC (外乗り用) / TADA No. 74 (ズイフト用) / GARNEAU GARIBALDI G2R (通勤&グラベル)
大学卒業後、無職を経験。オーストラリア人の彼女(現妻)と国際結婚するために仕事だけを生きがいに頑張っていたら気が付けば30代も後半に「自分には何も無い人生」に失望し、一念発起して-27kgのダイエットに成功、その後ロードバイクに出会いロングライドの楽しさに目覚め、無謀にも「キャノンボーラー」を目指す。「今が人生で一番楽しい」「残りの人生で一番若いのは今日」をモットーに頑張っています。0歳と6歳男児のパパでもあります。
ファストラン記録:大阪→東京キャノンボール 530km 23時間40分(2021年12月13日)
         チバイチ523km 22時間26分 (2021年10月15日)
          東京湾イチ252km 13時間17分 (2021年7月22日)